雑にかく

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エンジニア組織の立ち上げで人事が学んだこと

僕は今オプトという会社に勤めています。

この会社で採用に携わって4年目になりますが、直近エンジニア組織「Opt Technologies」の立ち上げに人事として参画したので、対峙した課題や気付き等を振り返り、整理してみたいと思います。エンジニアの採用に関わる方や、組織の立ち上げに関与する方に、何か1つでもヒントになる内容があれば幸いです。

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領域執行役員『今度エンジニア組織を立ち上げるんだけど、人事をアサインするなら誰がいいと思う?○○とか良いと思うんだけど…。』
私「あ、それ僕やってみたいです。」

当時中途採用は私1人だったので様々な調整や引き継ぎが必要になりましたが、翌々週くらいにはエンジニア組織専属の人事が決定していました。

Opt Technologiesでやってきたことと言えば、採用業務、採用広報、イベント運営、組織文化醸成、組織ロゴやサイトのディレクション、ディスプレイや電源タップの追加まで。つまりは組織の立ち上げに関わる何でも屋さんとして従事してきました。

困ったこと

組織立ち上げフェーズに求められる判断スタンス

異動前の私には、多方面からのリスクを排した判断が必要とされる機会が多くありました。判断材料になりうるステークホルダーや判断をした際のリスク、リスクに対するケア、ほか変数等多くの要素を鑑みた情報をテーブルに並べ、判断をしてきました(つもり)。少し時間がかかっても良いから、施策の効果が高く成功確度も高い、それでいて発現するリスクの少ない"解"を出す、といった感じです。

※この話だけすると「リスクを切ることに集中した結果、面白い人材を採用出来なかったり突出した何かが出来ないんじゃないの?」みたいな反論があるかもしれませんが、それはまた違う話。ここでいうリスクは「きちんと考えれば避けられる、取る必要のないリスク」を指す。施策によっては、投資対効果に応じて必要なリスクは取るものかと思います。

で、私のスペック程度では、立ち上げフェーズの組織においてこの仕事の進め方がうまく機能しませんでした。理由は明確で判断すべき事象が極端に多く、全て慎重に判断していると物理的に時間が不足するためでした。

以前の私の判断スタンスが「慎重に判断し限りなく100点に近づける」というものだったとしたら、エンジニア組織立ち上げ着任後は「瞬発的に判断し70点以上を目指す」といった判断スタンスが必要とされていたように思います。例えば以前なら「〜な課題があるから、…な施策を打ちたいけど、本当に上手くいく?実績を調べて、なければ相関ありそうなデータを集めて参照して…」みたいな進め方をしていたけど、今の組織では「色んなところから話聞いてる感じうまく行きそうだし、ちょっと似たような事例もうまくいってるみたいだしやってみようかな」くらいでゆるく判断していくような感じでした。

この「必要とされる判断のスタンスが違う」という課題に対峙した私が、学んだ考え方は「投資対効果よく判断リソースを配分する」ということ。これは結構シンプルな話で、インパクトの大きい判断は慎重に、インパクトの小さい判断は瞬発的に、といった感じです。

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難度やインパクトの度合いはグラデーションなので、ちょっと極端ですがこんな感じです。瞬発的に判断をする必要性を認識した時に「あ、これもっと能力が高い人が担うべきだったポジションだ」と思ったのはいい思い出。

牛歩的な判断能力の向上

今までセールスからバックオフィス、VCにデータサイエンティスト等本当に様々な職種の採用に関与してきました。各職種の職務内容や判断基準は、社員の方から話を聞いたりググったり本を呼んだりすれば、そこそこ理解が進みます。

一方過去に採用した職種と比較して、エンジニア周りの知識、特に開発に関する知識については、インプットしても中々芯を食わず採用判断に効果的に繋がる感覚は中々ありませんでした。この件を何名かのエンジニアに相談してみると「自分で実際に開発してみたらわかるかもよ」と言われて試しにSwift開発も始めてみました。

github.com

(プライベートレポジトリがメインなので、閲覧可能なのでいうと「猫の年齢を人間の年齢に換算するアプリ」みたいなアプリしかないですが…)

何か専門用語を調べればまた別の専門知識に辿り着く。知れば知るほど開発知識は深いものだと身を持って知り、私程度が開発をかじった程度では書類選考1つとっても精度が上がる感覚はあまりありませんでした。

如何せん立ち上げ組織にはやることが山積しているので、この課題に対する解決策も、先のものに近いですが「コストパフォーマンスの悪い投資はしない」ということでした。 本当に細かな採用ジャッジはエンジニアの方々にお任せして、私は集客や候補者の方を魅力付けするための情報等、関与割合の大きい業務に必要なインプットに絞り、代わりに他のエンジニアの方が持っていない情報や、データで判断することに注力しました。(ただ、あくまで「今は」投資を緩めるだけで、いずれは専門的な領域も高い精度で判断できるようになりたいなあと思っています。)

※ちなみにVCのインプットはこの書籍が本当に参考になりました。

よかったこと

まるで他社にいるような異文化から学べたこと

エンジニアの方々と働いていてよく思うのは様々な文化や価値観を持っているということです。情報共有文化、オープン志向、課題解決志向、ドキュメント文化等、職種は違えど本当に学ぶことが多くあり、それらは今の僕の仕事に色濃く反映されています。例えば共有ドキュメントには「アクセス容易性」「初見の人でも用途や更新方がかわかる理解の容易性」「他人からもトラッキングし易いオープン性」等の要素を、必要があれば盛り込むようになりました。

広報の重要さを理解出来たこと

採用と広報はニコイチであることを体験を以って知ることが出来たのは個人的に大きな収穫でした。Opt Technologiesはエンジニア向け技術イベント「市ヶ谷Geek★Night」というイベントを主催として定期的に開催していたり、ScalaMatsuri2016に大名スポンサーとして協賛していたりします。

面談の際には「何をきっかけにオプトを知っていただけたのでしょうか?」とお聞きするのですが、上記の広報施策を接点にOpt Technologiesに興味を持っていただけた方がそれなりに多くいたのもあり、適切なコミュニケーションを設計する重要度を理解しました。ただ同時に広報の難しさも感じており、特に広報施策の効果測定は難しいと感じています。

採用広報の施策は間接的な採用活動です。ストック型資産のようなもので、継続的な広報的投資によって受信者への認知が蓄積され、徐々に受信者の意思決定に効果が出てくるものです。故に、「どの施策が影響をもたらしたのか」が計測しづらいという側面を持ちます。きちんと測定をしようという姿勢を取らないと効果測定しづらい広報施策ですが、費用をかける以上「次回も〜円をかけてイベントに協賛すべきか?」等、データドリブンに意思決定をする必要があります。個人的にはこの辺りにまだ課題感を感じています。

ちなみにこのような、人事領域におけるデータに基づいた意思決定の話は私の上司が詳しく書いています。

medium.com

広報のKPI設計や検証については個人的に強化したい領域でもあるので、この辺りの知見をお持ちの方がいらっしゃれば是非お話お伺いしたいです!

おわりに

振り返って明確に言えることは、エンジニアの方々と働けたのは非常にエキサイティングで楽しかったということです。エンジニアリクルーターになったが故に出会えた方も多くいます。特にhitomediaの小山さん、Fringe81の内田さん、CyberZの阪本さん、TechClipsを運営しているnotariの今城さん等、知見のある多くの方にアドバイスをいただきました。また、そもそも異動のきっかけを作ってくださったえとみほさんにも感謝が絶えません。その節は本当に有難うございました…。

いまオプトにはOpt Technologiesの組成に伴い、手前味噌ですが能力の高いエンジニアの方々が集まってきています。組織としては整備されていない未熟な部分もありますが、整備されていないからこそ意志次第で関与出来る余地が大きい組織です。ご興味をお持ちの方はWantedlyでも、私のTwitterでもどちらでも構いませんので、メンションをいただければと思います。ぜひお話させてください。

最後に、特に参考になった書籍をいくつか置いておきます。ここまで読んでくださって有難うございました!